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高松高等裁判所 昭和34年(く)5号 決定

少年 H(昭一八・三・一生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は抗告人Gの抗告申立書に記載のとおりであるからここにこれを引用する。

論旨は少年は意思薄弱なため、周囲の誘惑に負け悪友に煽動されて本件非行に加担したものである。幸被害金額も軽微で弁償もおえたし、本人の将来については親もとで充分監督しながら家業の養豚業を手伝わせ、決して再び非行を反覆させないよう善導し、立派な人間に仕立てる存念であるから、少年院に送致する旨の原決定を取消されたいというのである。

しかし記録を調査するに、少年は既に小学校及び中学校下級生の頃から窃盗暴行等の非行を重ね、その暴行の非行により家庭裁判所の審判に付されたことがあるのにもかかわらず、その後も依然素行修まらず、昭和三三年七月五日から同三四年三月三日迄の間不良交友と共に或は単独で原決定記載のとおり恐喝一二回、恐喝未遂三回、暴行三回及び窃盗一回の非行を重ねたのであつて、その非行の動機態様等を検討するときは抗告人主張のように悪友に誘惑された結果とはいい難く寧ろ非行グループの主導的地位にあつたものと見られ、多分に再犯の虞もあり、その非行に対する安易な考え方や良心の減退はたとえ家庭において少年に対する保護監督に熱意を示すものとしても、在宅保護の方法によつてはその善導は到底望み難く、一定期間国家の施設に収容して適正な矯正教育を施す必要が痛感せられるのである。従つて原決定の執つた初等少年院送致の措置は妥当であり、原決定の処分に著しい不当はないのみならず決定に影響を及ぼす法令の違反も事実の誤認もない。

よつて本件抗告は理由がないから少年法第三三条第一項により主文のとおり決定する。

(裁判長判事 三野盛一 判事 渡辺進 判事 小川豪)

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